『NANA』の高木泰士(タクミ)は、20年以上たった今でも「クズなのか、それともいい男なのか」と議論が絶えないキャラクターです。

2026年にはX(旧Twitter)でも再び話題となり、「ハチはなぜタクミを選んだのか」「ノブと結ばれた方が幸せだったのでは」といった投稿が多く見られました。

一方で、大人になって読み返すと「20代の頃とは見方が変わった」という声も少なくありません。

今回は、『NANA』が今なお語り継がれる理由とともに、タクミとハチの関係を作品全体から考察していきます。

NANAのタクミとハチの関係が2026年も議論される理由

恋愛漫画には人気キャラクターが数多く登場しますが、『NANA』ほど「正解がない恋愛」を描いた作品は珍しいかもしれません。

タクミは仕事では誰よりも有能で、TRAPNESTを引っ張るカリスマです。

しかし恋愛になると、読者から批判される行動も少なくありません。

  • ハチへの支配的な態度
  • 女性関係のルーズさ
  • 相手の気持ちより仕事を優先する姿勢
  • 言葉より行動で物事を決めてしまう性格

その一方で、妊娠が分かった際には父親として責任を負う覚悟を見せ、生活面では家族を支え続けます。

だからこそ、「最低な男」と感じる人もいれば、「現実なら責任感のある人物」と評価する人もいるのでしょう。

この両面性が、20年以上たった現在も議論される最大の理由だと考えられます。

ハチは港区女子だったのか?東京で暮らすと見え方が変わる

最近では「ハチは港区女子っぽい」という意見も見かけます。

確かに、成功した男性に惹かれたり、恋愛を中心に生活が動いたりする姿だけを見ると、そのように感じる人もいるでしょう。

しかし、ハチが本当に求めていたものは、お金や肩書きではありません。

作中で一貫して描かれているのは、「誰かに愛されたい」「温かい家庭を築きたい」という願いです。

料理が得意で、恋人のために尽くし、子どもができた後も家族を守ろうとする姿勢からも、それは伝わってきます。

また、東京の音楽業界や芸能業界のように、人とのつながりが濃いコミュニティでは、友人の紹介やライブ、仕事を通じて交友関係が広がり、その中で恋愛関係が複雑になることも珍しくありません。

もちろん漫画ならではの演出はありますが、「こういう人間関係は現実でもありそう」と感じる読者がいるのも納得できます。

だからこそ、『NANA』はファンタジーではなく、東京で青春を過ごした人ほどリアルに感じる作品なのかもしれません。

なぜハチはノブではなくタクミを選んだのか

『NANA』最大の議論と言えるのが、この選択です。

ノブは優しく、ハチを大切に思っていました。

それでも最終的にハチが選んだのはタクミでした。

この理由を「お金があったから」と考える人もいますが、それだけでは説明がつきません。

ハチは昔から恋愛に依存しやすく、好きな人ができると相手を最優先にしてしまう性格でした。

一方で、結婚や家庭への憧れも非常に強く、「安心できる居場所」を求め続けていました。

タクミは愛情表現こそ不器用でしたが、父親になる覚悟を示し、経済的にも家庭を支える力を持っていました。

ノブには愛情があり、タクミには現実がありました。

ハチは、その現実を選んだとも言えるでしょう。

もちろん、その選択が幸せだったかどうかは読者によって答えが分かれます。

20代と30代・40代でタクミの評価が変わるのはなぜ?

『NANA』を読み返した読者からよく聞かれるのが、「昔はタクミが大嫌いだったのに、今は少し見方が変わった」という声です。

若い頃は恋愛を理想で考えやすく、ノブのような優しい人物に魅力を感じる人が多いでしょう。

しかし、社会に出て仕事や結婚、子育てを経験すると、人は理想だけでは生きられないことも知ります。

すると、タクミの「仕事を最優先にする姿勢」や「家庭への責任を果たそうとする一面」に現実味を感じる人も出てきます。

もちろん、浮気や支配的な態度が肯定されるわけではありません。

ただ、「現実にもこういう人はいる」という見方ができるようになることで、単純に悪役とは言えなくなるのです。

読む年代によって評価が変わること自体が、『NANA』という作品の奥深さを物語っています。

『NANA』は恋愛漫画ではなく「東京で生きる若者の群像劇」だった

『NANA』を恋愛漫画として読むと、「誰と結ばれるべきだったか」という結論を求めたくなります。

しかし、作品全体を見ると、それだけではありません。

夢を追う人。

仕事を優先する人。

恋愛に依存する人。

孤独を抱えながら生きる人。

強そうに見えて誰よりも弱い人。

それぞれが東京という街で必死にもがきながら、自分の居場所を探しています。

矢沢あい先生は、誰か一人を悪者として描いていません。

タクミにも弱さがあり、ノブにも未熟さがあり、ハチにも甘さがあります。

だからこそ、読む人によって共感するキャラクターが変わり、何度読み返しても新しい発見があります。

「タクミはクズか、それともいい男か。」

この問いに唯一の正解はありません。

だからこそ、『NANA』は20年以上たった今も世代を超えて議論され、読み継がれている作品なのでしょう。