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クロスゲーム あだち充 感想と考察 コウと青葉は呪縛から抜け出せたのか?

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あだち充「クロスゲーム」をはじめてじっくり全部読みましたので感想と考察をまとめてみました。

クロスゲームは、あだち充さんがH2の後に連載した長編野球漫画。間に、「KATSU!」や「いつも美空」の連載もありました。

おおまかなあらすじは、バッティングセンターと喫茶店を経営する家の4姉妹と、その隣でスポーツ用品店を営む家の息子の恋愛と野球、友情を描いたもの。全17巻で、1巻は小学生、2巻以降は中学、高校と進学していきます。

当時あだち充さんは、編集部界隈でもう少年誌ではヒットしないのではないかという雰囲気が漂っていたそうで、そんな中に担当編集さんが「逆タッチが見たいです」と案を出して作られていったそう。最初の思惑とは違い、中学生編になると人気を集め、アニメ化もされてヒット作となっていきます。

家が隣、幼馴染、家が自営業、野球部…などあだちワールドが炸裂していますが、最初から4姉妹の次女・若葉と主人公・光(コウ)は両想いなところはめずらしい設定かも。

しかし若葉が小学生の時にキャンプ地の水の事故で亡くなってしまいます。ここまでをコミックス1巻分使ってしっかり描かれているので、これから始まる物語のいたるところに若葉の影があって、またその呪縛に取りつかれてしまう様子も描かれています。

コウのひとつ下の青葉は、かわいくてモテるのに誰とも付き合わず、野球に没頭しています。コウのことは「好きだけど素直になれない」っていう感じじゃなくて「ほんとに嫌い」みたいな態度ですが、若葉がいなくなって一番近い距離にいるのは確か。しかも同じ野球部にいて、好きなだけ愚痴を言い合ったり若葉の思い出を話したり…。ぶっちゃけ、若葉がいたころから実はコウのこと好きだったんじゃないかと思います。

 

そんな微妙な関係のときに、コウの隣に新しくできた蕎麦屋の娘・あかね登場。これがまた亡くなった若葉に瓜二つで、親も驚くレベル。もちろんコウや青葉たちも動揺します。コウは気持ちがグラングラン揺れて、またあかねもコウに惹かれていきます。

が、あかねの登場によりコウたちは現実を見はじめ、自分の気持ちに素直になっていくような気が…あだちさんの漫画はハッキリ言葉を交わしたり、面と向かうシーンはあまり描かれないので、独特の「間」や台詞から想像を膨らませることが多いのですが。

 

最後、青葉とキャッチボールしてるときに

青葉「あかねさんのこと好き?」

コウ「ああ」

青葉「ワカちゃんより?」

コウ「亡くなったやつとは比べられないだろ」

青葉「じゃ私のことは?」

コウ「…」

コウ「ウソついてもいいか」

として、3つの「ウソ」を言います。

  • 160km/h出す
  • 甲子園に行く
  • そして青葉が一番好きだ

160キロ出して甲子園に行くことを達成し、3つめのウソも本当だったということでコウの本当の気持ちを知った青葉は、「ずっと大嫌いだったんだから」とウソで返事を返します。

 

っカーーーーーーー!たまらん。この「お互い一番だと思ってたけどずっとそれに触れずにきて、最後に意志疎通」っていうあだち充さんの得意なやつ!

「あだち充本」で読んだけど、コウと青葉みたいな関係性が一番好きなんだって。若葉みたいなタイプは、成長すると描きにくくなるって書いてあった。確かに、若葉がずっといる世界だとしたら、若葉はコウのことをずっと好きかもしれないけど、青葉の方が野球の面とか内面似てるところがあって惹かれて行っちゃうんじゃないかな。若葉には残酷な結末になるような。でもあだちさんの漫画は心底嫌なやつは出てこないから、きっと若葉は青葉にコウをゆずって一歩引くのかな。。。

あとさ、あだちさんの漫画って人が死ぬの多いけど、人って突然死ぬじゃん。しかもそれが小さい頃だと余計記憶に残るよな…。タッチでは和也、H2ではひかりの母、クロスゲームでは若葉…。

恋愛面以外にも、権力者のさじ加減で野球部を一軍とプレハブ組に分けたりするところも面白みがある。高校野球っていう面ではH2の方がおすすめだけど、クロスゲームもよかったです。なんか赤石と中西の立ち位置がかぶってる気がするけど。

ちょうど、新創刊で発売されるみたいなので読んだことない人は読んでみてね。

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