椎名あゆみ / ベイビィ★LOVE 作者インタビュー&裏話です。
椎名あゆみ『ベイビィ★LOVE』
集英社文庫<コミック版>全5巻
“見た目は大人だけど中身は子供”な主人公・せあらの恋愛奮闘記。上手くいきそうでなかなか上手くいかない……彼女と柊平の恋に全国の女子がヤキモキ!! また、せあらの頑張る姿を見て「告白しよう!」と思ったり「好きな人へ積極的にアタックしよう!」と勇気づけられた女の子もたくさんいました。
椎名あゆみprofile
8月29日生まれ。物心ついたころから「りぼん」を愛読。『ときめきトゥナイト』等に夢中になり、小学生の頃から友達と遊びでまんがを描き始める。そして87年『涙のメッセージ』で「りぼん」よりデビュー。代表作に『無敵のヴィーナス』『あなたとスキャンダル』『ベイビィ★LOVE』『ペンギン☆ブラザーズ』等がある。
1995年はこんな時代でした!!
●事件、出来事……地下鉄サリン事件、警察庁長官狙撃事件、阪神・淡路大震災、ゆりかもめが開通
●話題……オウム事件が注目を集め「ああ言えば上裕」「ポアする」などの流行語が生まれる。THE BLUE HEARTSが解散。アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』放送開始。野茂選手がメジャーリーグで活躍。
●ヒット曲……岡崎真夜『TOMORROW』、シャ乱Q『ズルい女』、スピッツ『ロビンソン』、Mr.Children『シーソーゲーム?勇敢な恋の歌?』小学生の女の子と中学生の男の子の恋。年上に憧れる年頃である『りぼん』読者から絶大な支持をうけ、大ヒットを記録! 恋にまっすぐで一生懸命な主人公・せあらに、女の子はみんな自分を重ね、作品に夢中になった。
やっとせあらの気持ちが届いたと思ったら……柊平の気持ちは他の女の子のもとへ。いざというときに気持ちがグラつく柊平に、全国の女子の非難が集中! このシーンでは、みんなせあらと一緒に涙した。
せあらがフラれてしまったときは大変でした。
“柊平なんて最悪!”と読者がみんな怒ってしまって(笑)。
主人公のせあらは、見た目はまるで高校生だが、実際は小学6年生!! 親の都合で海外に引っ越す予定だったが“あきらめられない夢”を叶えるため、直前になってトンズラ。昔から仲の良い“瀬戸のおじさま”の家へと逃げ込む。その本当の目的は……瀬戸家の長男・柊平(しゅうへい)!! せあらの“あきらめられない夢”とは、幼いころから大好きな“柊ちゃんとの恋の成就”だったのだ。
『あなたとスキャンダル』同様、今作で読者を「あっ!!」と驚かせたのが“小学生と中学生”という年の差恋愛。当時は“少女まんがの主人公が恋するのは同年代の男の子が当たり前”という風潮が強かっただけに、その設定はある意味とても衝撃的だった。
「最初は、もっと年齢差のあるカップルにしたかったんですけど。それじゃあ現実感が薄れるから、読者は共感しづらいかもねって、結果“3歳差”に落ち着いたんですよ」
柊ちゃんに近付きたい一心で、両親から離れてまで日本に残ったり、4年間で身長を46cmも伸ばしたり……(笑)。柊ちゃんのためなら不可能も可能にする!! そんな猪突猛進で一生懸命なせあらの姿と恋に読者は夢中になった。
「読者からは、まるで自分もせあらになったような、スゴク作品に入り込んだお手紙をよくもらいました。それだけに、柊平がせあらをフッてしまう回では、バッシングがものすごくって(笑)。でも、私的にはそれはそれでなんだか嬉しい気持ちになったんですよ。柊平を非難する手紙に綴られた厳しい言葉からは“みんな、それだけこの作品に入り込んでくれているんだな”ということを感じることができたから」
“心に残る作品”もいいけど、私は
“まんがを開いているその瞬間”をハッピーなものにしたい。「私が住んでいるのは田舎の小さな町なので、私が住んでいることを聞きつけた小学生が“椎名先生いますか?”と、当時はよくたずねてきましたね(笑)」
回を重ねるごとに大ヒット作品へと成長していった『ベイビィ★LOVE』。この連載中、せあらだけでなく、椎名さんの夢もいくつか叶ったんだとか。
「そもそも、私は幼い頃からずっと“りぼんっ子”だったんですよ。姉が『りぼん』を買っていたので、物心ついたころから読んでいたし。まんが家になるときも“『りぼん』で連載を持てるまんが家になりたい!!”ってずっと思っていたんです。
実際に『りぼん』で連載が持てるようになってからも、“いつかやりたい”と思っていたことがいくつかあって。そのひとつが“ふろくのメインイラストを描くこと”だったんです。だから、トランプのイラストを描かせてもらえたときは本当に嬉しかった!! 私のなかで、トランプってふろくのメイン中のメイン的存在だったんですよ(笑)」
そのトランプは「今でも大事にとってあるんですよ」と笑う椎名さん。
「『あなたとスキャンダル』も『ベイビィ★LOVE』も、自分が思うように好きに描かせてもらった作品。苦労よりも楽しい思い出のほうがたくさん残っていますね。
私ね、まんがを描くうえで“このメッセージを伝えたい”とか“読者にとってこういう作品を作りたい”とか、そういうことはあまり考えていないんです。いつも思っているのは“読んでいる間、楽しんでもらえる作品にしたい”ということ。心にズシンと突き刺さっていつまでも抜けない……そんなまんがも大好きだけど、私はエンターテインメントとして楽しんでもらえる作品を描きたいなって思うんです。私のまんがを開いている間、たくさん笑って幸せな気持ちになってもらえたらそれだけでいいというか。まあ、それで心に残ったら残ったで、さらに嬉しいっていうのも正直な気持ちではありますけどね(笑)」
常にまんがを愛す心を忘れず、楽しみながら作り上げるからこそ、生まれた名作達。これからも、椎名さんの作品を楽しみにしています!!
(取材・文/石井美輪)
せあらってちょっとキラキラネームかな?
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