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【集英社・少女まんがアーカイブ】小花美穂 / こどものおもちゃ 作者インタビュー&裏話

こどものおもちゃ 1 (りぼんマスコットコミックスDIGITAL)

小花美穂 / こどものおもちゃ 作者インタビュー&裏話です。

 

小花美穂『こどものおもちゃ』

 

こどものおもちゃ 全7巻セット (集英社文庫―コミック版)

こどものおもちゃ 全7巻セット (集英社文庫―コミック版)

 

 集英社文庫<コミック版>全7巻

小学6年生の紗南(さな)はTVやCMで活躍する子供タレント。クラスで発生していた“先生いびり”の首謀者・羽山(はやま)に宣戦布告するけど、羽山のことを知っていくうちに、ただのイヤなやつではないことに気づき始めて……。明るく元気な紗南や個性的な母親など登場人物たちのコミカルなやりとりの一方、誰もが抱える悩みや辛さなど心の中を深く描いた作風は幅広い読者層をつかんだ。アニメ化もされた小花さんの代表作と言える作品。

小花美穂profile

4月26日生まれ。1990年に「りぼん」より『窓のむこう』でデビュー。98年に『こどものおもちゃ』で講談社漫画賞を受賞する。『こどものおもちゃ』終了後も『アンダンテ』、『パートナー』など豊かな表現力を感じさせる独創的な設定の作品を生み出している。現在は月刊誌『クッキー』にて『Honey Bitter』を不定期連載中。

 

1994年はこんな時代でした!!
●事件、出来事……羽田孜内閣が発足64日で総辞職。日本初の女性宇宙飛行士・向井千秋が宇宙へ。松本サリン事件発生。
●話題……ビートたけしがバイク事故。ジュリアナ東京閉店。小室哲哉プロデュースでTRF、篠原涼子がブレイク。
●ヒット曲……『innocent world』(Mr.Children)。『DA.YO.NE』(EAST END×YURI)。『ロマンスの神様』(広瀬香美)。『OH MY LITTLE GIRL』(尾崎豊)。

 

スーパーポジティブ思考な小学生タレント・紗南が活躍する『こどものおもちゃ』。未だにこの作品のファンだという人もいるほど、根強い人気を誇る名作です。小花さんにとって、この作品の大ヒットは降って湧いたものではなく、きちんと計画されたものだったとか!?

 

『こどものおもちゃ』名物といえば、主人公の紗南が発する“サナ語”。単語のセレクトは微妙に間違っているはずなのに、なんとなく意味は通じているという紗南オリジナル言語です。ときには、むしろ深ぁ~い意味合いの言葉になっていたり!?

「サナ語は自分の日常会話から自然に湧き出てきました。妹とこういうアホなことばっかり喋っていたんですよね(笑)」(小花さん)

 

自分史上最高のヒット作を目指して始めた作品。

 

人生で初めてまんが雑誌を愛読した記憶をたどると、「小学生のころ手に取った『りぼん』」という人が多いのでは? 実際「りぼん」読者は、今も昔も小学生女子がその中心を占めるはず。なのに「りぼん」で連載されているまんがの主人公はたいてい中学生や高校生だったりして、リアルな小学生を主人公にした作品は意外と珍しい。

 

そんな小学生を主人公にしたレアな作品の中で、記憶に残るもののひとつといえば、小花美穂さんの『こどものおもちゃ』――通称『こどちゃ』。もともとは「新人賞の賞金狙いで(笑)。漫画家デビューは考えていなかった」という小花さんが、プロになる決意をしたのは、ある先輩漫画家の言葉がきっかけだったとか。

 

「何度か投稿して賞をいただいた後に、審査員をされていたさくらももこ先生のところでアシスタントをするようになったんですよ。そのときに“漫画家になる気はないんです”と言ったら、先生が“あなた、できるんだから、やりなさいよ!”と言ってくださって。“漫画家になったらこんなイイことがある”というのを教えてくれたんです。それで、やってみようかなと(笑)。もちろんイイことばかりでなく大変なことも多いというのは、漫画家になってから知ったんですが(笑)」

 

ちょうど小花さんがアシスタントをしていたころに、『ちびまる子ちゃん』が講談社漫画賞を受賞。

 

「それで“私も講談社漫画賞を取ろう! アニメ化もできたらしよう!”と、考えるようになったんです。すごく軽い感じで(笑)。でも、思いこんでるとかなうみたいで、この2つは実現したんですよね」

 

その講談社漫画賞受賞、アニメ化という夢をダブルでかなえることになったのが、『こどものおもちゃ』という作品だった。

 

「自分史上でいいので、売れる作品を描こうと思っていたんです。だから、『こどちゃ』に関しては、たまたまヒットしたのではなく、最初からそれを狙って作ったものなんです。自分が思ったよりウケて、少々驚きましたが」

 

売れる作品にするために、まず考えたのはキャラクター。主人公である紗南(さな)は、自分が小学校時代にあこがれた女の子をモデルにした。

 

「いたんですよ。こういう子が。元気で明るくて、クラスで事件があったときにはちゃんと意見が言えて。しかも芸能界に片足突っ込んでるような子が。自分があこがれるタイプの人は、きっとみんなもあこがれるんじゃないかと思って描きましたね」

 

紗南の相手役となる男の子・羽山(はやま)は、クラスの悪ガキチームのボス。冒頭、紗南と羽山は完全に対立するところから始まる。

 

「紗南と羽山は、やいやいケンカをしててほしかったんですね。『トムとジェリー』みたいに(笑)。だから、ちょっとひねくれた男の子を相手役にしてみようかなって」

 

本当は紗南と羽山を
くっつけたくなかった!?

少女まんがなので、当然紗南と羽山は恋愛関係になっていくと思いきや、紗南が超ドンカンであるため、なかなかそうもいかない。2人が中学生になってからは、思いがすれちがい、羽山が紗南の親友でもある風花(ふうか)とつきあってしまったりも!

 

「羽山と風花がつきあい出したときは、読者からの非難がすごかったですね~(笑)。風花に対して“このしもぶくれ!”っていう意見があったりして。たまたま私が芸能人の紗南と、一般人な風花との区別をつけようと思って、紗南の輪郭をすっきりめに、風花の輪郭を少しふっくら描いたことがあったんですよ。そうしたら“しもぶくれ”扱いに(笑)。よく見てるなぁと思いました」

 

最終的には、紗南と羽山が無事につきあいはじめるのだが、ここにも小花さんなりのこだわりが隠されている。

 

「本当に私の好みだったら、紗南と羽山をくっつけたくないんですよ(笑)。2人は男女を超えた精神的なところで繋がっているから、別につきあわなくてもいいかなって。でも、この作品だけは、読者が一番好きな展開にしたかったので」

 

自分の好みではなく、読者の好みを優先するとなると、ストーリー展開も難しかったのかと思いきや、そうでもないのだとか。

 

「描いているうちにどんどん次が浮かんできて、それを形にするだけだったのでストーリーで苦労はしなかったですね。筆が遅いほうなので、考えたことを絵にする作業で苦労しましたけど。それでも今に比べたら、ずいぶん気楽に描いていたと思います(笑)。

 

小学生を描く上で気をつけていたのは、言葉遣いかな。紗南に“人生楽しいの”って言わせようとしたことがあったんですけど、小学生って“人生”なんて言うかな?と考えて、“毎日楽しいの”に替えてみたり。

 

『こどちゃ』に関しては、何より紗南が動かしやすいキャラクターだったんですよね。その後の作品は、やはり紗南とはタイプの違う主人公にしているので、紗南に比べると動かすのが難しくて(笑)」

 

『こどものおもちゃ』が連載されていたのは、ちょうど子供タレント――いわゆるチャイドルブームが巻き起っていた時代。紗南はまさにその時代を象徴するキャラクターだが、紗南を見ていても感じるように、今に比べると“こども”という世代に元気があった時代なのかもしれないと思わせられる。

(取材・文/古川はる香)

 

 

その②

 

『こどものおもちゃ』が大人から子供まで幅広い年齢層のファンを持つ作品になったのは、登場人物や人間関係が実に奥深く、リアルに描かれているからなのでしょう。小花さんの漫画家としてのこだわり、描きたいものを紐解いて行くと納得できるものが。

 

ようやく結ばれた羽山(はやま)と、離れ離れになってしまうかも……と感じたとき、紗南(さな)が“人形病”という心の病にかかり、表情が全くなくなってしまう!『こどちゃ』終盤、最大の事件です。“人形病”というのは、小花さんの造語。

 

「人間って“うつ”っぽくなると無表情になるじゃないですか? それを大げさに描いた感じですね。このラストだけは“読者の好み”を考えず、自分がやりたい方向で進めていきました」(小花さん)

イヤなヤツはイヤなヤツのまま。
まんが的にきれいにまとめたくなかった。

『こどものおもちゃ』、そして小花さんの作品の魅力といえば、そのギャグセンス。シリアスなシーンでぐっと緊張感が高まったかと思うと、それを裏切るように、力の抜けたギャグシーンがやってくる。

 

「やっぱり笑えないとイヤなんですよね。映画でもシリアス一本だとつまらないと感じてしまう性質なので。自分でも、同じ話をするのに、ちょっと作ってでもおもしろく話そうとしちゃいます(笑)」

 

このギャグセンスはもちろん小花さんならではのものだけど、幼いころ好きだったまんがからも、その片鱗が感じられる。

 

「人生で初めて親にねだって全巻そろえたまんがが大和和紀先生の『はいからさんが通る』でした。クラスの誰かが持ってきたものを偶然読んで“こんなにおもしろいまんががあるんだ!”と思ったんですね。『はいからさん』も、シリアスかと思ったら急にふざけたりするじゃないですか? おこがましくも、そのあたりはどこかで影響を受けているかもしれません」

 

シリアスなシーンでついふざけてしまうというのは、実はとてもリアルなことなのかもしれない。『こどちゃ』の中には、そんなリアリティがそこかしこに存在している。登場人物の人間くささもそのひとつ。明るくポジティブな紗南(さな)には、生まれて間もなく実の親に捨てられたという過去があり、それが彼女の脆さに繋がっている。

「ただ明るい子なんて、あまりいないと思うんで。紗南の過去とか、脆さっていうのも深く考えず自然にキャラの中に入っていました」

 

また、『こどものおもちゃ』の中に出てくる大人たちにも完璧な人間はいない。何か事件が起きれば戸惑うし、ときには子供に怒られるような間違った選択もする。

 

中学生になった羽山(はやま)の担任である千石(せんごく)先生も完璧でない大人のひとりだ。自分に反抗的な羽山を目の敵にし、執拗に嫌がらせをする。そんな千石先生の態度に紗南がキレる場面はあるものの、その後先生が羽山に対して謝ったり、改心するようなことはない。

 

「そこでまんが的にきれいにしてしまうのはどうも気が進まなくて。やっぱりあそこまでひねくれて大人になっちゃった人は、そのまま生きていくんじゃないかな、と」

 

描きたいのは人と人の間にある
“空気感”なのかも。

終盤での大きな山場となる紗南の“人形病”をはじめ、『こどちゃ』には心の不調が人にどんな影響をもたらすかが、何度か描かれている。今でこそ“うつ”など心の病が一般的に広く知られているが、当時はまんが等で取り上げられるほど一般的なものではなかったはず。

 

「自分自身が弱くなったときに、それを客観的に見ている自分がいて、体が弱くなると心も不健康になるじゃないですか? そういう体と心の繋がりっておもしろいなと思って題材として入れてしまいました。心の弱さとか強さについてもすごく考えるんです。やっぱり作家って考えるのが仕事ですから。きっと普通の人より余計なことをすごく考えてるんでしょうね。そういうのがまんがに出てくるのかもしれません」

 

この話を聞いて、『こどものおもちゃ』を改めて読むと、小花さんが人間というものを深く観察していることが伝わってくる。

 

「そうですね。人間というものを描きたいですね。それから、私が描きたいものは、絵じゃなくて“空気感”なんです。映画でいうと演出の部分になるのかな。人と人との関係性が変わるときにその場に流れる雰囲気とか、空気感とかそんなものが描きたいみたいです。

よく“作画をすべて他の人に任せてしまいたい!”って考えるんですけど、この間とか空気感は自分でしか出せないと一応思っているので。やっぱりそこは、人には任せられないですね」

 

『こどものおもちゃ』が、子供にも、大人にも楽しめる作品である最大の理由は、この“空気感”のせいかもしれない。

子供も大人も、言葉にしなくても感じることができる“空気感”。誰もがきっと抱えており、大人になっても簡単に克服できない“心の弱さ”。そんな全世代共通の要素が『こどものおもちゃ』という作品に奥深さを持たせているのだと思われる。

 

(取材・文/古川はる香

少女まんがアーカイブ/s-woman.net/集英社

少女まんがアーカイブ/s-woman.net/集英社

 

 

ヒットを狙って作った作品だとは…!

芸能界に片足突っ込んでるとか、そういうの確かにあこがれるw

この続編も発売されていて、今も連載している「Honey Bitter 」とのコラボまんがです。

見たかったような、見たくなかったような??

って買っちゃったけど!!! 

Deep Clear―「Honey Bitter」×「こどものおもちゃ」

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こどものおもちゃ 全10巻完結(りぼんマスコットコミックス ) [マーケットプレイス コミックセット]

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こどものおもちゃ 全7巻セット (集英社文庫―コミック版)

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