甲子園が始まるとH2が読みたくなります。
あだち充さんの漫画「H2」は、登場人物の心境やあえて描かない場面が読む人の想像を掻き立てます。現に、「H2 考察」などと検索すると多くの人がたくさんの感想や考察を書いています。
でも、男性目線のものが多いように感じたので女性目線で書いてみようかなと思いました。あくまでも私の考察・感想です。
恋愛目線で見る「H2」思春期のズレ
恋愛目線で見るH2は、思春期のズレが大きく影響しています。ひかりが英雄を「あの人誰?」と比呂に聞いた中1の時点では、比呂はただの幼馴染。そして比呂がひかりに英雄を紹介し、付き合い始めます。
その後、ひかりと英雄は付き合いを続けますが、高校生になっても近い場所で比呂を見ているひかりは「あれ…なんか結構いい男かも」と思い始めます。思春期が遅れてやってきた比呂もまた、すでに親友とカップルになっているけど「俺も、ひかり好きかも(初恋)」とじわじわ思い始めます。
よくある、女子の方がませてて成長が早いってことですね。比呂の成長が遅いのはあだち充さん自身がそうだったらしく、自分を重ねている部分があるそう。
好きだと気づいた時点で自分の想いを打ち明けないところがあだち充さんの描き方なんですが、登場人物がみんな他人思いなんですよね。
物語は野球メインですが、4人の主人公はそれぞれに恋愛感情と複雑な人間関係を抱えながら進んでいきます。
ひかり…英雄と付き合っているけど、比呂もどうしても気になってしまう。それが幼馴染だからなのか恋愛感情かどうかはわからない。春華に焼きもちを焼くような場面もある。英雄とキスしてるところを比呂に見られてあたふたする。
英雄…ひかりと付き合っているけど、ひかりの本当の気持ちがわからなくてイマイチ自信が持てない。「ひかりは本当は比呂の方が好きなんじゃないか?」という葛藤。
比呂…ひかりが気になるけど、親友の彼女ということで表向きは感情を出さない。同時に春華から好意を寄せられ、嫌じゃないけれど素直に受け入れられず。ひかりを忘れるために春華に向こうと頑張っているようにも。ひかりは初恋、春華は恋愛かな?
春華…比呂が好き。だがひかりと比呂の関係を知って、自分にしかできない方法で頑張ろうと奮闘する。まっすぐな想いに比呂も心を動かされる(I Love You」など)。読者票ではひかりより人気があったらしい。
ひかりと比呂の関係は、何かのきっかけで一線を越えてしまいそうなとてもあやふやなものなんだと思うのですが、英雄の影があってお互い抑制しているのかなぁと。英雄がイマイチ自身を持てないのも、英雄が弱みをひかりに全部見せていないからっていうこともあるのかな。
ラストの描写などが色々考察されていますが、比呂はひかりへの初恋にピリオドを打つための対戦なのかなっていう感じがしますね。あの試合を経てみんな自分の気持ちを確認し、伝え、大人の階段を上るという。
事実、ひかりと比呂は試合前に二人きりで会って、ひかりに「さよなら」と告げられています。この時点でたとえ比呂がひかりを選んでも、ひかりは比呂を選ばないのではないか…と推測することができます。ひかりは比呂を何回かフっているような描写もありますよね。比呂が暴投して負けた試合の後に「初恋が遅れてきた」と告白するところも、ひかりは「ごめん」と言っています。好きなのはわかったけど、答えることはできないというニュアンスですよね。
つまり、ひかりの気持ちはほぼ確定していた…と思うのですが、まわりのふたり(英雄と比呂)が不安や親友を想う気持ちなどからどっちつかずになっていたと言えるのではないでしょうか
・比呂は、ひかりに「さよなら」と言われたことで春華とも向き合おうとする。試合では英雄を三振に取り、勝利。ひかりをあきらめなくてはならない決定的な事項となってしまい、涙する。初恋からの卒業。
・英雄は三振して負けるが、そのおかげで?ひかりに初めて弱みを見せることができた。
・ひかりは「ヒデちゃんには私が必要」と、初めて英雄に正直に伝えることができた。
・春華は上記3人の想いを詳しくは知らない。
・野田は全てを察知して思いを馳せた。
あだち充本によると、この最後の野田の目をミリ単位で修正していたそう。野田の表情やそこから読み取れるバックグラウンドを想像させたのかなと。確かにそのくらい重要なところです。
女性から見ると、ひかりはポーカーフェイスで完璧なので、本当は何を考えているかわかりにくいですよね。貪欲になれば全部手に入れられるのに、あえてそうしない感じ。ちょっと南ちゃんぽいですけど、南ちゃんはタッちゃんが好きだったし和也がいるときから(正面きってじゃないけど)アピールしてましたもんね。
最初から最後まで英雄と付き合ってる割りには、あんまり英雄ラブなところがないのでそりゃ不安になるだろうなっていう。マネージャーになってほしいっていうお願いを断ったり、英雄の目の視力が落ちた時に甲子園に行っていたりとか。そんなひかりが気持ちを動かされて行動するのは、比呂との間に何かあったりするときだけですよね。
対照的に春華はわかりやすくて、同姓から見たら頑張れ!っていう感じ。ひかりも春華も、ふたりとも嫌なところがないので読んだ後の変なイライラとかはないんですよね。だから読んでて比呂といい感じになったり、キスしたりが出てきたときは嬉しかったなぁ。
漫画ではラストでも比呂と春華がつきあうとかそういうシーンはありませんが、この先は距離が縮まるのかもしれません。あえて描かないところもニクい。
これもあだち充本からですが、最後はこの4人の恋愛模様を決着つけないと、と思っていたそうです。でもまぁ結局、比呂が一番色々背負って苦しいのかなとも思ったり。主人公なのに、優しいって罪ですよね。
あと余談ですが、女の子の私服にノースリーブが多かったりするのはあだちさんの趣味なのかな!?
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