尾崎南 / BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989 作者インタビュー&裏話です。
尾崎南『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』
BRONZE ZETSUAI since 1989 コミック 全14巻完結セット (マーガレットコミックス)
- 作者: 尾崎南
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/03/24
- メディア: コミック
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マーガレットコミックス(1)~(14)
アーティスト・南條晃司の想い人は泉拓人という男性。はっきりと拒絶されながらも、彼を愛する姿勢を決して変えない晃司に、拓人も少しずつ心を開いていく。しかし、2人の行く道は決してなだらかではなく、晃司と拓人の愛を試すような試練が次々と待ち受けていた……。尾崎南氏の代表作であり、ライフワークとも言うべき作品。
尾崎南profile
2月27日、神奈川県生まれ。1989年に『3days』でマーガレットにてデビュー。同年に『絶愛-1989-』の連載を始める。その後91年より『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』を連載開始。『BRONZE-ブロンズ-ZETSUAI since 1989』は14巻まで刊行されている。それまでの少女まんがとは一線を画したストーリーと洗練された画風は多くの熱狂的なファンを持つ。
1991年はこんな時代でした!!
●事件・出来事……湾岸戦争勃発。ジュリアナ東京オープン。SMAPがCDデビュー。宮澤内閣発足。ソビエト連邦崩壊。千代の富士引退。雲仙普賢岳で大火砕流が発生。
●流行、話題……ドラマ『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』。宮沢りえがヌード写真集『Santa Fe』発売。ダンス甲子園。
●ヒット曲……愛は勝つ(KAN)。どんなときも(槙原敬之)。それが大事(大事MANブラザーズバンド)。
『マーガレット』読者に衝撃を与えた名作『絶愛』の続編として始まった『BRONZE』。様々な壁を乗り越えて、次第に思いを通わせていく晃司と拓人の姿に、性別を超えた“愛”について考えさせられた人も多いはず。
思い入れのあるシーンとして、尾崎さんがあげたのがココ。
幼い頃、母親が父親を殺すという現場を目の当たりにした拓人だけど、それは2人が愛し合った末のことだと信じていた。しかし、実際は父親の浮気が原因だったと知って……。唯一の精神的なより所を失って、雪の中泣き崩れる。拓人を象徴するタイトルをつけ、
拓人主体で描く予定が……。『BRONZE』は、男どうしの恋愛を描いた尾崎さんの初連載作『絶愛』の続編になる。『絶愛』は、拓人が迷いながらもようやく晃司の思いを受け入れるのか!? という状況と“ENDLESS END”という意味深な言葉を残して幕を閉じたため、『BRONZE』が始まったことで、ほっとした読者も多かったはず!
「1年間隔週連載をやっていて、心身ともに“もう無理無理無理無理!!”となり、『絶愛』は自然とあの形で終わりました。もともと構想とかそんな高尚なものはなくて、情熱のみでやっていたので……。隔週や週刊で連載やってる方々はすごいですねぇ」
こうして『BRONZE』は、毎号連載という形式に縛られず、休憩を挟みつつ掲載されていくことになった。結果、連載は10年以上続く超大作に!
もし尾崎さんの中で、終着点が決まっていたり、作品の構想が固まっていたなら、『BRONZE』はもっと早く終わっていたかもしれない。このような連載形態になったのも、尾崎さんが自身の情熱に突き動かされるように描かれている作品だからだろう。
この連載を始めるときに、尾崎さんが持っていた構想がひとつあった。「『絶愛』はどっちかというと晃司の暴走物語だったので、『BRONZE』は拓人を象徴するようなタイトルに変えて、拓人側にうつりたいなと思ってたんです」
ブロンズというのは拓人の肌の色だ。サッカー少年で、年中太陽の下でボールを蹴っている拓人の肌は、褐色に焼けている。『BRONZE』というタイトルには、そんな意味がこめられていたのだ。
でも「そんなのカンケーなく晃司は暴走してました……」と、作者の尾崎さんも引っぱりまわしてしまうオレ様ぶりを発揮する晃司!『BRONZE』で、晃司の複雑すぎる生い立ちや、家庭環境が頻繁に描かれるという展開が、想定外のことだったとは!
過酷なシーンを描くのは
作者にとっても過酷な作業。拓人もようやく晃司の思いを受け止めようとしたとき、拓人はサッカー留学をし、晃司は交通事故に遭う。『BRONZE』初期の出来事だ。これを皮切りに、次々と試練とも言うべき事件が晃司と拓人を襲う!! 2人とも自らに苦悩が降りかかれば我を失う状態になることも。それをもう1人が支え、徐々に愛が深まっていく。
あまりにもハードな運命に、読む側も自分のことのように辛くなったり、「今度こそもうダメかも!?」と絶望しかけただろう。ようやくそれを乗り越えたかと思えば「またなの!?」と叫んでしまうような苦難がまたやってくる……。
尾崎さん自身「自然とああなってしまいました」と語るが、そんな過酷なシーンを描いているときの状態を聞くと「吐きます。気絶します。狂います」と壮絶なお答えが。
晃司や拓人が、自分の不幸を省みず相手を愛する姿は、自らの命を削るようにしてまんがをつづる尾崎さんの姿と重なっていたのだった。言ってみれば晃司、拓人、尾崎さん、3人分の魂がこもっているまんがだ。読む側が心を揺さぶられないわけがない。
時代はバブルが崩壊し、景気も悪化の一途をたどっていこうとしていた。お金や肩書きとは関係ない純粋なまでの愛情が再評価されはじめていた。晃司と拓人が愛し合う姿は、そんな時代のさきがけだったのかもしれない。
15年もの連載を経て、晃司と拓人の関係は変わっていき、新たな登場人物が増え、作品の世界は広がっていったように思える。でも、じつのところ『BRONZE』という作品は、ただ1点の真実に集約されていっているのかもしれない。
その②
交通事故のため、半身不随になった拓人。それをきっかけに晃司との関係もギクシャクしはじめる。そんなシリアスなシーンも克巳が現れるとギャグ要素がプラス!! 克巳の存在は、拓人と晃司だけでなく、読者にとっても大切な緩衝材になっているはず。尾崎さんの好きなキャラは
晃司の敵とも言えるあの人たち!『BRONZE』の登場人物の中で、読者と作品世界をつなぐ架け橋となっているのは、中学時代から晃司の友人である渋谷克巳(しぶやかつみ)だろう。晃司の所属事務所社長の甥で、彼の歌の才能を最初に見出した人物でもある。この克巳、晃司と拓人の関係をおもしろがって何かと絡んでくるが、2人が困ったときに救いの手をさしのべる人物でもある。
克巳が見守っていたから、晃司と拓人の関係は成り立っているのかも!? そんなことも考えてしまう。
さらに『BRONZE』で欠かせない登場人物と言えば、晃司の兄である広瀬(ひろせ)と秋人(あきひと)。
父の愛を奪われたことから晃司を恨む広瀬と、広瀬を慕う結果、彼を苦しめる晃司を憎む秋人。何事にも執着しなかったはずの晃司が拓人に執着するのを見て、2人の晃司への憎悪は拓人にまで及ぶ。『BRONZE』で晃司と拓人に起こる災難には、主に広瀬と秋人が絡んでいる
読者からすれば「このヤロー!」と思ってしまう南條家の長男・次男コンビだが、尾崎さんからは意外な言葉が。
「キャラクターだと広瀬と秋人、それから広瀬のボディガードである倉内(くらうち)が好きです。この人たちは楽しいというかラクに描けますね。ココロの負担が主人公たちよりマシ、ということですけど」
晃司と拓人を描くことは
自分が産まれた意味と死ぬ理由。人が人を愛することの意味は何なのか? 愛は何があっても消えないものなのか? ある意味哲学的な問いかけが続く『BRONZE』。その答えを求めるため、晃司と拓人には試練が与えられ、それを乗り越えることで新たな真理をつかんでいく。その姿はもはや修行のよう!
読むほうも、学園コメディや甘くふわふわした恋愛まんがを読むときとは違う心構えで挑まねばならない。
尾崎さんに『BRONZE』を執筆する上で苦労したこと、辛かったことを聞くと
「すべて、です」
という答えが即答されてきた。
やはり自分自身をギリギリまで追いつめて、自問自答を繰り返しながら描いて来たということだろう。
2003年に発売された『BRONZE』13巻のラストには“ENDLESS&START”という言葉がある。そして2006年発売の14巻は“endless-unlimited”と締めくくられている。これは一体何を意味しているのだろう。今後も『BRONZE』は続くのか、それとも……。
「晃司と拓人を描くことは、自分が産まれた意味と死ぬ理由です。この物語に“END”はありません」
単に“晃司と拓人は結ばれて、幸せになりました。めでたしめでたし”を目指すだけのまんがなら、ここまで多くの人の心に残る作品にはなっていないだろう。
私たちは、晃司や拓人とまた出会えるかもしれない、でももしかするともう出会うことはないかもしれない。そんな風に先が見えないのは、実際の人生なら当たり前。
そこが『BRONZE』の魅力のひとつではある。けれども願わくば、もう一度晃司と拓人のその後について、尾崎さんの描く世界で見てみたい。今までも、これからも、それを待っている時間だって『BRONZE』というまんがの一部なのだという気がしてくる。
当時はあまり真剣に読んでなかったな…(すみません)絵柄の印象はすごくあるんですけど…もう1回読みたい!
BRONZE ZETSUAI since 1989 コミック 全14巻完結セット (マーガレットコミックス)
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